成年後見

2024年12月 6日 (金)

高齢者施設の「入所一時金0円」はお得かどうか

Pxl_20241205_215536570入所一時金が0円の施設さんや、「キャンペーン」と打ち出して、入所一時金を0円にされている施設さんもありますが、先に払うか、後に払うかの問題なので、損も得もありません。

逆に「0円」を打ち出している施設さんのほうが、退去時の、現状回復費用の請求が細かかったりして?

ある施設さんでは、生活保護の方でも、役所から「敷金10万円」を確保してくれています。

後見人としては、最後の清算時に、とても助かります。施設代の請求は、通常1か月(以上)遅れて届くため、敷金の返金分で、最後の施設代や後見人報酬を賄えたりするためです。

「キャンペーン」を続けておられている施設さんに、「滞納がないんでしょ」と聞くと、「そうです」と。「これだけの金額を払える方なら、滞納はないでしょうね」と私。

一時金の有無とは別に、生活保護の方に対し、違う家賃を設定する「二重基準」を設定されるかどうか。紹介会社を入れられるかどうか。

この点は、施設さんによって、はっきりと方針が分かれます。

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2024年12月 5日 (木)

親族の後見人等は、他の親族の後見等の申立てはできない【成年後見】

Img_20231104_144258_20241205191801後見人等として親族さんの中に入らせてもらうと、実は「他の親族さんにも、後見人等が必要だった」という状況が、起こりえます。

私自身、今現在、ひとつの親族さん間で、複数の方の後見人等をさせてもらっている例が、3件あります。それと、事務所の司法書士と、別々に後見人等に就任している例が、1件あります。

「あえて、第三者の専門職を入れて、複数の目を通したほうがいいのではないか」と考えることもありましたが、関係者ともお話をして、ご本人らが混乱されてもいけない、ということで、避けたこともありました。

現時点の、大阪家裁の運用としては、下記のとおり。

1.親族の後見人等は、他の親族の後見等の申立てはできない

2.後見開始の審判を受けた本人は、他の親族の後見等の申立てができない
 →但し、保佐、補助であれば、親族の後見等の申立ては可能

優先順位を誤り、仕切り直しとなったこともあるので、定期的に、整理しておきたい部分です。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 コラム087「子の後見人が親の後見等開始の申立ができるか(成年後見)

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2024年12月 3日 (火)

後見よりも保佐・補助のほうが申立は複雑に【成年後見】

20231123_150231688-1金融機関に保佐人就任の届けに出向いて、窓口で「同意権はないのですね?」と聞かれた時、保佐開始の審判書に事件番号が2つしかないので「ないです」と答えた瞬間、「あ、保佐の場合、同意権は元々あります」と回答。

窓口の人も、そう思われていたようで、抜き打ちテストのようでした。

申立ての印紙代は、後見の場合は、開始の審判分のみで800円。保佐は、開始と代理権付与で1,600円。補助の場合で、同意権も入れる場合は2,400円。

「認知症の程度の軽い方ほうが、申立て費用が高くなる」と言うと、関係者からは意外がられますが、包括的な代理権がある後見より保佐。保佐より補助のほうが、申立ては複雑になる構造です。

ご本人に、保佐や補助の代理権目録、補助の同意権目録を理解してもらうのも大変。

大阪家裁本庁の最近の運用では、事実上、ほぼ裁判所の面接が省略されていて、申立てに関与した司法書士が『説明状況報告書』を作成。「司法書士がどんなふうに説明したかと、それに対する本人の反応は」などを書くようになっているのですが、

保佐・補助の場合、どれだけの字数を打ち込むのか、という量になります。

ご本人に拒否があるのも「後見より補助」なので、後見制度の利用自体に抵抗があるのに、難しい言葉が並んだこの目録はなんぞや。難しい言葉も、簡単に言い換える力も問われています。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所「コラム138 大阪家庭裁判所における後見の書面審理(成年後見)」

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2024年12月 2日 (月)

マイナカードがあると住所異動届にひと手間かかる【成年後見】

Pxl_20241108_035444493マイナンバーカードにとって、ひとつの節目となるのが、今日、12月2日。

「政府は、本人確認書類のリストから、健康保険証を外す方針」というニュースを見て、思い切ったことするもんだなと思ったのですが、「そして、健康保険証の代わりに資格確認書を入れる」というのですから、何やっていることか、分かりません。

先週、「マイナンバーカード保有」の被後見人さんの、住所変更の手続きをしてきました。

正確には、住所の異動届は出したものの、マイナカードの暗証番号が分からない。そのため「暗証番号再設定のための書類。本人の住所に確認書を送るので、それを持って改めて来て下さい」ということで、改めて行ったのですが、「後見人であれば、確認書の送付は不要だったのにな」と、マイナカードの担当者。

「マイナンバーカードの住所変更届」を手書きしながら、「なんでまた紙で書かすんでしょうね」と聞くと、「よく言われるんですが、我々は国の出先機関なので、言われたとおりするしかありません」と。

被後見人さんらの住所異動の手続き。マイナカードを保有されていることで、余分な手間がかかるのは、引き続き変わりません。

12月2日から「健康保険証が使えなくなるから、マイナンバーカードを作らないといけない」という解釈は誤解、ということも、併せて。

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2024年11月22日 (金)

特別弔慰金国庫債券の申請と相続手続き【相続・成年後見】

Pxl_20241020_061539981 現在、第十一回の特別弔慰金国庫債券の償還期間中。来年が、5年分の5年目となります。

戦没者の遺族に対する弔慰金を、国債形式で償還されているもの。そういう意味では、日本もまだ、戦争を引きずっていることになります。

特別弔慰金国庫債券の手続きには、一番最初は、被後見人さんが持たれていたので、関与することになりました。他所の郵便局では、取扱い不可。印鑑を届けてある郵便局で、その年の分を切り離して、現金を受け取ります。

しかし、その次の弔慰金の申し込みをしている最中に、亡くなられました。

次は、被保佐人さんが「過去に国債を持っていたのを見た」という証言をもらって、区役所で調査。まだ受付期間中であったため、区役所での申請は間に合いましたが、国債が届くまでに亡くなられました。

最近では、純粋な相続手続き(夫婦間)を取り扱ったのと、被補助人さんが持たれていたはずの国債が見当たらなかったので、郵便局経由で日銀に再発行の申請。今年の分を、受け取ったところ。

郵便局、日銀。それと、住所地の役所が関与する、珍しい手続き。

全体像が見えたところで、備忘録としてコラムにまとめました。「特別弔慰金国庫債券の相続手続き」です。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 コラム84「特別弔慰金国庫債券の相続手続き」

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2024年11月20日 (水)

「理性的な問いと、不合理な答え」

Pxl_20241113_033926407 後見人等として、被後見人さんらの自宅不動産の売却をするケース。

実は「自宅を売却しないと、お金が足りない」というケースは少なくて、売却するのは、管理上の都合。

昨今、自然災害が増えていることで、周囲に迷惑を及ぼす可能性であったり、空き家のままというのは、防犯上好ましくないため、といった事情を書いて、裁判所に提出することが多いです。

居住用不動産の売却の場合は、裁判所の許可が必要、とされています。

一方、「売却しないと、お金が足りない」ケースでは、ことごとく、ご本人の抵抗を受けています。

長年住み慣れた自宅、好んで施設に居るわけではない。細かいお金の計算は分からない。でも、戻れるならば自宅に戻りたいと思われているのですから、それも仕方がない。でも、後見人である私は「後見人なんだから、何とかしてください」と利害関係者から、言われるわけです。

「お金が足りないから、このままでは施設に居れないです」という正論も、周りから見たらどうなのか。

後見人というのは、本人が嫌だと言っているのに、他人様の家を売却して、ひどいことする人なんだなと思われないよう、親族さんであったり、施設の方も巻き込んで、精神的なケアもしてもらいつつ進める、しかありません。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 成年後見サイト「住んでいた不動産(居住用不動産)を売却する手続き」

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2024年11月19日 (火)

「任意後見契約」or「必要になった時に補助の申立」【成年後見】

Pxl_20241118_075252131公証人の先生に、施設まで出張してもらい、遺言書と死後事務委任契約。それと、見守り契約をしました。

本来であれば、ここに「任意後見契約」もセットで入れるべきところですが、「絶対に後見人が必要」という環境にはおられないこと。見守り契約を入れてあるので、もし必要になれば、本人申立てという形で、一番軽い「補助」の申立てをお勧めすればいいのでは、という考えもあります。

「今のうちに、司法書士と任意後見契約をしておきますか。それとも、必要が生じた時に、裁判所で後見人を選ぶ申立てをしますか」という選択は、素人の方には、とても難しい話になります。選択に必要な要素が、多過ぎるためです。

「本人申立で補助」という選択は、例えば、突然の脳梗塞で起きられなくなった、という事態には対応できません。

任意後見契約を発効させるには、ご本人が認知症になられた時に、裁判所に任意後見監督人の選任申し立てが必要になります。結局、裁判所の手続きを踏まないといけない。ご本人の同意も必要です。

法定後見制度で「司法書士に後見人を頼みたい」と言ったら、監督人が必須ではないのに、任意後見だと監督人が必須(=監督人の報酬も必要)、というのは、制度上の不備。バランスを欠いている気がします。

それと、「頼みたいことを、自由に選べる」のが任意後見のメリットとされていますが、私が6年前に締結させてもらった任意後見契約では、「マイナンバーに関する諸手続き」が抜けてしまっています。必要なことは、時代の流れ、その時の環境によっても、変わってきます。

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2024年11月11日 (月)

「成年後見業務 取り扱い実績一覧」を更新

Img_20231103_160143-1 成年後見サイトの「成年後見業務 取り扱い実績一覧」を更新しました。

今年は、現時点で、新規の就任が9件。

トータルの就任で、53件。
現時点就任中は、28件となります。

堺の司法書士でありながら、裁判所の管轄が「大阪本庁」が続いているのは、「施設さんの紹介が多い」というのが、一番の理由です。

定期的に面会に通っていると、「また1人頼みたいのですが」というお話を、いただくことになります。身寄りのない方を、身元引受人がない状態で引き受けてくれる施設がある、ためです。

まさに、「仕事が仕事を生む」という状況で、とはいえ、施設さんとべったりになると、何か問題が起きた時に言えない、ことになりますので、一定の距離感は保ちながら、お付き合いしているつもりです。

就任時と死亡時には、通常時の3~5倍くらいの負荷がかかります。7月8月頃は、いろいろと重なって大変。事務方もパンクしかけでしたが、今は態勢を立て直すことができています。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所後見サイト「成年後見業務 取り扱い実績一覧」

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2024年11月10日 (日)

『発達障害に生まれて(松永正訓著)』

Pxl_20241110_094716046mp 『発達障害に生まれて(松永正訓著)』は、未読のまま、本棚にあった本。

先週紹介した『開業医の正体』の中で、題名が出て来たので、もしかしてと本棚を探してみた。同じ著者でした。

この本が深みを出しているのは、著者は医師である「私」であるものの、「母」から聞き取った話を、「母」の視線で、自閉症である勇太君のことと、「母」の心の動きを赤裸々に語られている部分。その「母」は、特別支援学級の教員資格を持っている、という背景もあります。

「障害」の「害」の文字を使う理由など、専門家のフィルターを通して語られているので、伝わり方が違います。

「子供は親を選んで生まれてくる」という話は、本当にその通りと思うしかありません。但し、教員資格を持っていることと、自分が親になることとは全く違う。母の気持ちの変化も、リアルに伝わります。

成年後見制度の話も、出てきました。

私の事務所でも、難病を持つ兄妹の後見人をお受けしています。我々のほうが年長になります。役所の手続きも、何種類もあって複雑。この本に書かれているように、「信頼できる後見人に出会えた」と、ご本人とお母様に思ってもらえる存在で、居続けないといけません。

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2024年11月 8日 (金)

年金の振り込みは急には止まらない【相続・成年後見】

20240316_170745950-1 被後見人さんが亡くなられた後に入る年金は、未支給年金。
相続財産とはならず、要件を満たす遺族の方が、請求されることになります。

要件を満たすような遺族の方がおられない場合は、後見の残務処理がややこしくなるため、年金の入金口座を凍結させて、年金が入らないようにしていますが、今回、8/15の年金について「ご返納いただける方を調査しています」と、今頃、通知が来ました。

聞いてみると、年金振込口座の解約がされていない限り、凍結されていても、振り込みの処理がなされてしまう、と。

振り込まれたお金は、どこで止まっているんでしょう。年金事務所への死亡届は、7/17に投函しています。

年金事務所に死亡届を出しても、振り込みはすぐに止まりません。感覚では、1か月半あれば大丈夫。1か月であれば、間に合わないかもしれない。そもそも、その死亡届も、年金事務所にマイナンバーが収録されている方は省略できる、とされているのに。

死亡届を出した以上、その後の年金の送金は止めてもらわないと、相続人と、未支給年金の請求者が違う場合は、清算がややこしくなります。未支給年金の請求をしても、亡くなられた方の口座に入金されてしまえば、年金事務所はノータッチ(但し、年金事務所からの返金の請求はしない)という立ち位置、です。

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